現役のペットショップ店長、のあちです。
子猫を家族として迎え入れる方にペットショップ店長として「子猫のときは3回、来年からは1年に1回ワクチン接種しましょう」と説明しています。
しかし、「1年に1回のワクチン接種は必要ない」という論調があるのをご存じですか?
今回は猫のワクチンについて深堀りしていきたいと思います。
0歳時のワクチン接種は必須
まず、はじめに強調して伝えておきたいことは「ワクチン接種は絶対に行なうべき」ということです。ワクチン接種は健康の維持には欠かせないことで、感染症などから守ってくれるからです。
ここからはワクチン接種の目的や種類を詳しく見ていきましょう。
ワクチン接種の目的
感染症の予防
感染症にかかるリスクを減らすためにワクチン接種をします。特に子猫は免疫力が弱く、病気にかかりやすいため、必ずワクチン接種をする必要があります。この感染症に感染すると後遺症を残すような病気にかかる可能性もあります。
感染症の中には空気や飛沫で感染する可能性もあります。「外に出ないから大丈夫」と安心はできません。あなた(飼い主)が外出先から菌を持って帰るかもしれません。
免疫力の強化
ワクチン接種は体内の免疫システムを活性化させることができ、感染症に対する抵抗力、免疫力を高めることができます。また、多頭飼いの場合や外の猫と接触した場合、他の猫に感染が拡大してしまうことが抑止できます。
ペットホテルに預けることができる
ここまで健康上の理由を挙げてきたので、少し目線を変えてみます。
ペットショップなどで数日間ペットホテルに預ける場合、「1年以内に接種したワクチンの証明書」を提示しなければペットホテルを利用することができません。
ワクチン接種してないと断られるよ
ワクチンの種類
猫の飼い方によって接種すべきワクチンの種類は異なります。
室内飼いで外にあまり出ることがない猫は3種混合ワクチンで充分です。一方、外に出る猫や多頭飼いの猫は念のため5種混合ワクチンの接種をオススメします。
ここでは3種混合ワクチンに含まれている、予防できる感染症について触れていきます。
猫カリシウイルス感染症
鼻水やくしゃみ、咳、発熱など呼吸器系の症状が一般的です。重症化すると口内炎のような腫瘍ができたり、肺炎になることがあります。子猫は特に免疫力が弱いので他の病気と合併しやすく重症化のおそれが高まります。
猫ウイルス性鼻気管炎
猫ヘルペスウイルスによって発症する病気で、発熱や鼻水、くしゃみ、食欲不振、目ヤニが一般的な症状です。猫の風邪とも言われることもあり、猫によるみられるウイルス性の病気です。症状が慢性化することも多く、一度感染してしまうと完治させることは難しいため、感染させないことがとても重要です。
風邪だと思って甘く見ちゃダメだよ
猫汎白血球減少症
猫パルボウイルスによって発症する病気で、「猫パルボ」とも呼ばれます。感染力が非常に強い胃腸炎で、食欲不振、嘔吐、下痢、高熱が症状として表れます。子猫の場合は特に重篤化しやすく、死に至ることもあります。
子猫は特に注意が必要だね
このような感染症の抵抗力を高めて猫を守る役割を果たすのが混合ワクチンです。特に子猫は免疫力がなく病気にかかりやすいので混合ワクチンを接種し、猫の健康を守ってあげましょう。
ワクチン接種のタイミング
0歳時のワクチンは3回~4回接種することが推奨されています。
母親からの抗体に守られている「母子免疫」が存在する間はワクチンを接種しても抗体ができないため、この母子免疫が消失すると言われる生後7週から8週付近で初回ワクチンを接種するのが一般的です。その後、約4週ごとに生後16週になるまで接種する必要があります。
感染症予防のためだよ♬
成猫のワクチン接種も必要ではあるが
0歳時は上記のように3~4回の接種が必要です。しかし、成猫のワクチン接種については見解がいくつか存在することをご存じですか?
1年に1回接種するのは古い!?
もともとワクチンは「感染症にならないように」接種をしています。しかし、「ワクチンを接種することで腎臓に負担がかかる」という報告もあります。健康を守るためにワクチンを接種していたつもりなのに、ワクチンを接種することで腎不全のリスクが高まるなんて。と嘆きたくなります。
なので最近では感染リスクの高い猫を除き、3年に1回の接種を提案してくれる動物病院も多くなってきています。
それでは、どのような場合が1年に1回の接種を勧める「感染リスクの高い猫」なのかと言うと、
- 多頭飼いをしている
- 外に出ることがある
- ペットホテルをよく利用する
このような、他の猫と接触する可能性が少しでもある場合は1年に1回接種をした方が良いとされています。
みんな3年に1回の接種で良い?
他の猫と接する機会のない猫は3年に1回のワクチン接種で良いとされています。これは前述した通り、「ワクチン接種により腎臓に負担がかかる」「腎不全になりやすくなる」ことが報告されているからです。
しかし、多頭飼いの家のように1年に1回接種した方が良い猫もいます。猫の生活環境や生活スタイルによって獣医師と相談のうえ決めていくのが最善といえます。
つまり、「1年に1回の接種は古い」や「全猫3年に1回でOK」といった情報は誤りということになります。
ネットの情報に騙されないで!
ワクチン接種の副作用
リスクがないわけではない
予防接種をすることで「腎不全になりやすくなる」以外の副反応も出ることがあります。ワクチン接種後に食欲や元気がなくなったり、注射を打った箇所を痒がったり、痛がったりすることがあります。勿論、体質や環境によっても異なるのですべての猫に当てはまるわけではありません。
- 食欲がなくなる
- 元気がなくなる
- 接種した箇所を痒がる、痛がる
- 顔や目の周りが腫れたりむくみが出る
- 接種した箇所に腫瘍ができる
- アナフィラキシーショックを起こす
挙げた中で、最も危険なのはアナフィラキシーショクです。苦しそうな様子(呼吸困難)や嘔吐などの症状があり、重篤な場合は死に至ることもあります。ほとんどの場合は接種後数十分程度で起こるので、接種後は少し病院に留まり様子を見るのが良いでしょう。
ただ、これらの副作用は一般的には非常に稀で、ほとんどの猫は何も問題なくワクチン接種することができます。副作用が心配になる気持ちはわかりますが、リスクの回避より免疫力アップの効果を期待する方が得策であると言えます。
最悪の場合を考えて
アナフィラキシーショック以外にも危険なものがあります。それは注射した箇所に肉芽腫や線維肉腫などの腫瘍ができる可能性があることです。
これまでは首元、背中付近に注射をするのが一般的でしたが、そこに腫瘍ができた場合の切除が非常に困難になるため、最近では後ろ脚や尻尾など、最悪切除することになっても命の危険が少ない箇所に注射をするようになってきています。
念には念を、ってやつだね♬
まとめ
いくつかリスク、副作用も挙げましたが、猫はワクチン接種をするべきです。猫の健康を守り、感染症よ予防するためにとても有効で重要なものです。
ただ、接種には生活環境や年齢、健康状態なども考慮してワクチンのスケジュールを獣医師に相談することも併せて重要になります。
予防接種を一切しないで深刻な病気にかかってしまったり、飼い主の精神的、経済的な負担がかかったりすることのリスクを考えると、ワクチン接種をお勧めします。病気をしっかり予防して、猫との生活を豊かなものにしていきましょう。