猫はセルフグルーミングという、自分の舌を使って全身の毛づくろいをします。
猫にとってシャンプーは自分の匂いではなく別の匂いが付着するのでとてもストレスに感じてしまいます。ペットサロンなどでトリミングを行う場合も大半は犬で、猫のシャンプーやトリミングは断られます。こういった面でも、定期的なシャンプーは敬遠されがちです。
しかし、シャンプーが必要な場合もあります。特に長毛種や高齢猫は毛玉や皮脂過剰が生じやすいため、定期的なシャンプーが健康な被毛と皮膚の維持に役立ちます。
この記事では、猫にシャンプーが必要な理由や頻度、適切な手順について詳しく解説し、飼い主が愛猫の健康と快適な生活をサポートする方法に焦点を当ててみようと思います。
猫がセルフグルーミングをする理由
猫は本来、舌を使って自分で毛づくろいを行います。毛づくろいを行う主な理由はいくつか挙げられます。
- 清潔維持
- 舌に小さな突起がある特殊な構造によって、自分の舌で毛玉や汚れを舐め取ります。これにより、被毛が清潔な状態を保つことができ、異物や臭いを取り除きます。また、毛づくろいは皮膚の血行を促進し、健康な皮膚状態を維持します。
- 冷却効果
- 毛づくろいによって唾液が毛に付着し、それが蒸発することで体温を下げる冷却効果があります。これは暑い日や活動後に特に見られます。
- 毛玉予防
- 毛づくろいは毛玉の予防にもなります。毛づくろいによって舐められた毛は消化されやすく、毛玉ができにくくなります。
- ストレス緩和
- 猫はストレスや緊張を感じると毛づくろいを行います。これは自己鎮静化の一環であり、不安や緊張を和らげるための行動です。
- 社交性
- 猫同士の社交行動や絆を強化するためにも、毛づくろいが重要です。猫同士がお互いの毛をなめあうことで、仲間意識や信頼感を築くことができます。
- 身体の異常を確認
- 毛づくろいを通じて、猫は自分の身体に触れ、異常を感知することがあります。たとえば、腫れや傷などがあればそれを発見しやすくなります。
- 縄張りの香り付け
- 毛づくろいを通じて顔をなめ、その行為によって自身の匂いを毛に付着させます。これにより、自分の存在を他の猫に示すことができます。
毛づくろいは、猫にとって自己ケアやコミュニケーションの一環であり、さまざまな生理的・行動学的な機能が結びついています。
猫にシャンプーは必要ないと言われる理由
猫が毛づくろいでセルフグルーミングする一方で、シャンプーが必要かどうかは個体や状況によって変化します。以下にいくつかのポイントを挙げて説明します。
- セルフグルーミングで清潔だから
- 前述した通り、猫は毛づくろいをしてセルフグルーミングをします。被毛の清潔を保ち、健康な皮膚を維持することができます。
- 皮脂のバランスが崩れる
- 毛づくろいによって皮脂トラブルを防ぎ、皮脂のバランスを整えることができます。シャンプーなどでの過剰な洗浄はこのバランスを崩す可能性があります。
- ストレスになる
- シャンプーは猫にとってストレスの原因になることがあります。シャンプーの匂いが気に入らない、水が怖い、ドライヤーの音や風が嫌い、などストレスになり得る要因は多くあります。
猫にシャンプーが必要かどうかは、個体差や状況により異なります。通常の状態では、猫の自己グルーミングが十分であり、過剰なシャンプーは避けるべきです。
猫にシャンプーは必要だと言われる理由
短毛と長毛で違うシャンプーの必要性
そもそも猫のシャンプーの必要性は、短毛種と長毛種で異なる場合があります。これから短毛種と長毛種に焦点を当てた違いを説明します。
短毛種の猫
- セルフグルーミング
- これまで何度も述べてきた通り、セルフグルーミングは短毛種の猫で最も効果があります。そのため定期的な短い間隔でのシャンプーは不要です。
- 屋内飼い
- 外に出るとノミやダニが付着、感染してしまうリスクもありますが、屋内で飼っている場合はそういった心配もほとんどないので被毛を綺麗に保つことができます。
長毛種の猫
- 毛玉のリスクが高い
- 長毛種の猫は毛が絡まりやすく、毛玉のリスクが高まります。毛が絡まると皮膚の通気性が悪くなり、皮膚疾患の可能性が増加します。定期的なブラッシングで毛玉予防ができますが、必要に応じてシャンプーをする必要があります。
- 定期的なブラッシング
- 長毛種の場合は、排泄後におしりが汚れてしまったりする場合もあります。普段はアルコール不使用のウェットティッシュなどで拭けば大丈夫ですが、汚れ具合によってはシャンプーをした方が良い場合もあります。
猫が屋内飼いか屋外飼いか、また猫が外に出る頻度など、生活環境・飼育環境によってもシャンプーの必要性が変わります。
皮膚トラブルの場合はシャンプー必須
猫が皮膚疾患にかかっている場合、定期的に薬用シャンプーを使用してシャンプーする必要があります。ただし、この場合獣医師の診断と判断に基づいて行うようにしましょう。
- 真菌感染症
- 猫が発症した真菌感染症では、特定の抗真菌シャンプーを使用することがあります。シャンプーが真菌を殺菌し、被毛や皮膚を清潔に保つのに役立ちます。
- アレルギー性皮膚炎
- アレルギー性皮膚炎によって引き起こされるかゆみや炎症がある場合、特定のシャンプーがアレルギーの症状を緩和し、皮膚を鎮静化させる助けになります。
- 乾燥した皮膚
- 乾燥した皮膚や過剰に荒れた皮膚が問題となる場合、保湿効果のある特定のシャンプーが推奨されることがあります。
一般的に皮膚疾患の際に行うシャンプーは薬用シャンプーと呼ばれる種類のものを使用します。いくつかおすすめの薬用シャンプーがあるので、ページ下に通常時使用のシャンプーとともに挙げておきます。
シャンプーの手順
猫は一般的に水やシャンプー、ドライヤーに対してとても敏感でストレスに感じることがあるので、シャンプーをする際は、慎重さ・丁寧さはもちろん、ある程度の速さも必要になります。猫にシャンプーをする際の注意点をまとめてみました。
- 事前準備
- シャンプーを選ぶ・・・人間用のシャンプーは絶対にNGです。猫専用のシャンプーを使用しましょう。「犬猫どちらも使える」シャンプーもありますが、個人的にあまりおすすめはしません。
- ブラッシングをする・・・シャンプーを始める前にブラッシングをします。中~長毛猫は毛玉がある状態で水に濡らしてしまうと毛玉が固まってしまい取れなくなります。
- シャンプーを泡の状態にする・・・猫用シャンプーをお湯に混ぜ、泡を作っていきます。猫を濡らしてしまってからこれをやってしまうと風邪をひくリスクが高くなるので必ず事前にやっておきます。
- シャワーで濡らす~シャンプーをつける
- お湯でゆっくり丁寧に・・・35℃程度のお湯を使って背中からかけていきます。シャワーヘッドを直接背中に当ててあげると水しぶきも起こらないのでおすすめです。
- シャンプーを全身に・・・シャンプーが皮膚まで届くように、そしてマッサージをするように全身に泡をなじませていきます。
- シャワーで流す
- 顔付近は要注意・・・耳や鼻に水やシャンプーが入ると病気や窒息の原因となり危険です。絶対に耳や鼻には入れないようにしましょう。シャンプーに慣れるまでは、顔回りにシャンプーをつけるのは避けても大丈夫です。
- シャワーで流す・・・シャワーヘッドを直接体に当てながら泡を流していきます。毛の根元付近や足の付け根に泡が残りやすいので注意しましょう。
- 乾かす
- まずはタオルを使う・・・濡れたまま放置すると毛玉の原因になったり、風邪を引いてしまったりするのですぐに乾かしてあげることが必要です。バスタオルなどの大きなタオルで全身を包み、水分を取ってあげます。
- 乾いたタオルに替える・・・タオルは複数枚使用し、都度替えてあげた方が早く乾きます。
- ドライヤーを使う・・・ドライヤーを使用し、暖かい風で乾かしていきます。ドライヤーの音や風に驚いて嫌がる場合は、ドライヤーを使用せずタオルで乾かしましょう。ドライヤーを使用する場合は、ブラシを使いながら乾かしてあげると早く乾かすことができます。風量は弱く、熱すぎない風にすることがおすすめです。
- 終了
- 湿っている箇所がないか・・・しっかり乾いているかの最終チェックをしましょう。少しでも湿っていると感じる場合はまだ完全に乾いていません。
- ご褒美をあげる・・・頑張ったご褒美としておやつなどあげるといいかもしれません。
シャンプーの選び方
猫に適したシャンプーは、被毛と皮膚にやさしく、同時に特定の状態やニーズに対応できるものがおすすめです。
猫のシャンプーを選ぶ際の一般的なポイントと、おすすめのシャンプーをいくつか挙げてみます。
選ぶ際のポイント
pHバランス
猫の皮膚はわずかにアルカリ性です。したがって、猫の皮膚に適したpHバランス(酸性から中性)のシャンプーを選ぶことが重要です。
無香料または軽い香り
猫は香りに敏感で、強い香りのシャンプーがストレスを引き起こすことがあります。無香料または軽い香りの製品を選ぶと良いでしょう。
天然成分の使用
天然成分が含まれているシャンプーは、敏感な猫の皮膚にやさしく、過敏症やアレルギーのリスクを軽減できます。
ノミやダニ対策
ノミやダニに対する効果があるシャンプーもあります。特に屋外で遊ぶ猫や寄生虫の心配がある場合は、対策を考慮すると良いでしょう。
おすすめの猫用シャンプー
A.P.D.C. 猫用シャンプー
被毛のダメージを補修し、皮膚を健康な状態へ導く猫用シャンプー。抗酸化作用、抗菌作用の高いルイボスエキスが配合されていて潤いを保ちます。
ゾイック トリートメントインシャンプー
長毛種用、短毛種用と個別に販売されているゾイックトリートメントインシャンプーです。潤いをつくるヒアルロン酸ナトリウムや紫外線を保護するシアバターなどが配合されています。
薬用ノルバサンシャンプー
動物医薬部外品のノルバサンシャンプーは、消臭・殺菌効果があり、皮膚トラブルに使用します。真菌感染症やアレルギー性皮膚炎などの皮膚疾患の猫には数日に1回の薬用シャンプーが推奨されますが、獣医師に判断を仰いでから使用するようにしましょう。
まとめ
猫にシャンプーが必要かどうかは、個々の猫の状態や環境によって変わります。
短毛種の猫は通常、自分で毛づくろいを十分に行えるため、定期的なシャンプーは必要ありません。一方で、長毛種の猫は毛玉のリスクが高いため、ブラッシングとともに適切な頻度でシャンプーが検討されることがあります。どちらの場合も、猫の健康状態や生活環境により異なるため、飼い主は注意深く観察し、必要に応じて獣医に相談することが重要です。