ペットショップに行くといろんな犬種の子犬たちが迎えてくれます。そんな空間に癒されている方もいるのではないでしょうか。
もしかすると、そんなペットショップからゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーなどの大型犬が姿を消すことになるかもしれません。
ペットショップから大型犬が消える理由
2022年6月に動物愛護法が改正されました。飼育スペース(犬舎)のサイズや運動スペースの設置、運動時間の確保などペットショップ運営においていくつかの縛りが増えました。
その法律改正においてどう変わったのかを見ていきましょう。
飼育スペースの広さを確保
子犬や子猫の寝床・休息場所が一般的なペットショップのような犬舎・ケージ飼育(分離型飼養)の場合、基準となる犬舎(ケージ)の大きさに数値基準が定められました。
犬 タテ・・・体長の2倍以上 ヨコ・・・体長の1.5倍以上 高さ・・・体高の2倍以上
猫 タテ・・・体長の2倍以上 ヨコ・・・体長の1.5倍以上 高さ・・・体高の3倍以上(2段以上の構造)
※体長・・・首元の胸骨端から坐骨端までの長さ
※体高・・・地面からキ甲部までの垂直の長さ
ペットショップの対策は…
大型犬種や月齢が経って大きくなってしまった犬など、体長の2倍以上のスペースをキープできなくなってしまった犬や猫は飼育できないため、大きい犬舎・サークルを用意する必要があります。
大型犬など、ある程度成長した際に犬舎スペースの条件をクリアできない可能性のある犬種は、そもそも仕入れなくする、といった対応となる可能性もあります。
毎週体長と体高を計測するよ
運動スペースと運動時間の確保
分離型飼養(上記のような犬舎、サークル等での飼養)の場合、1日3時間以上運動スペース内で自由に運動できる時間を設けること、という基準が具体化されました。その他にも、飼養、保管する場合は清潔な給水を常に確保すること、散歩・遊具を用いた運動を通じ、ふれあいを毎日行なうこと、などがあります。
ペットショップの対策は…
犬舎、サークルで飼育されている子犬はそれぞれ1日3時間以上運動スペースで自由に遊ばせなければなりません。運動スペースの広さと子犬自身の大きさ(体長・体高)によって一度に運動させることができる子犬の数が決定されます。
一緒に遊ばせる場合は相性や体格差も大事だね
従業員人数による飼育頭数の制限
スタッフ1人当たりの飼養保管頭数が多くなると子犬や子猫たちの健康や給餌状態、施設の維持管理が行き届かない傾向があるため、清掃・給餌・健康状態確認・運動・触れ合いなどを適切に行なう必要があるため、スタッフ1人当たりに飼養できる管理頭数が明確になりました。
ペットショップの対策は…
すべての業務の作業平均時間などから常駐スタッフの数を算出し、そこからスタッフ数が正しいか確認を行なうためにチェック表を作成します。算出したスタッフ数に対応する飼養保管頭数が上限を超えないようにしなければいけません。
飼養可能頭数とスタッフの勤務一覧のようなチェック表があるよ
こんなペットショップがピンチ!?
飼育スペース(犬舎)が狭い店舗
ある程度成長するまで販売できずに売れ残ってしまった場合のことを考慮して、ゴールデン・レトリーバーやラブラドール・レトリーバーはもちろん、小型犬ジャンルの中でも大きいサイズに分類される柴犬やコーギーなども店頭に並ばせることができません。
運動スペースが確保できない狭い店舗
店舗面積がとても狭い店舗は、そもそも運動スペースの確保が困難になるため、子犬の生体販売は難しくなるのではないでしょうか。猫に関しては適切な広さの猫舎があれば運動スペースは必要ないため、犬の生体販売を止め、猫の生体販売のみに切り替えるなどの対応が必要になります。
個人経営などの少人数スタッフ店舗
常駐するスタッフの人数で飼養可能な頭数が決定されるため、個人経営のような少人数スタッフ店舗で同時に多くの子犬や子猫を飼養することは出来ません。そもそも、少人数スタッフ店舗で多くの仔犬や子猫は居ないでしょうから、ペットショップにはあまり関係ないかもしれません。
少人数スタッフでとても多くの子犬子猫を飼養する利益追求主義のブリーダーに向けた法改正とも捉えることができます。
営業時間(スタッフが店舗にいる時間)が短い店舗
店舗で飼養されているほぼすべての子犬・親犬は1日3時間運動スペースで運動をしなければいけません。運動スペースが1つしかない店舗は、「運動スペースに何時から何時までの3時間で誰と誰を遊ばせるのか」を考えなければなりません。1回の運動スペースで遊ぶ上限頭数も決まっていますし、体格差がありすぎると怪我をしてしまう恐れもあります。
例えば、同じような月齢の、同じような体格の犬を一緒に遊ばせるとしても、それが3時間です。スタッフが店舗にいる時間が9時間だとしても、9(時間)÷3(時間)=3(回)です。3回の入れ替えしか運動スペースが稼働しません。一緒に4頭遊ばせるとしても12頭しか運動できないことになってしまいます。
つまり、営業時間が短い店舗は「運動スペースに出すことができない犬」が発生してしまう可能性があるのです。
まとめ
今回は少し変わった視点から法律改正によるペットショップの変化をまとめてみました。
実際ペットショップで働いている立場から言わせていただきますと、
- 中型~大型犬を仕入れることが難しくなった
- 運動スペースの導入で店舗が狭くなった
- 運動スペースに誰と誰を入れ、どう稼働させるのか考えるようになった
もちろんコストなどは掛かっていますが、正直変化はこの程度です。
逆に言えば、抜け道を探してこれくらいの変化も出来ていないペットショップがまだまだ存在するのも事実です。これから子犬や子猫をペットショップから迎えることを検討される方はこういった目線からペットショップを判断するのも面白いかもしれません。